秋の始めの出来事 Ⅱ
ネットって不思議だね。
だって君とはかなり年が離れていたのに
ちっとも距離を感じなかった。
物理的な距離は遠かったけれど、心はすぐそばにいたね。
きっと君は知っていた。
ベッドに縛られていても、電子の扉を開ければ
どこまでも羽ばたいていけること。
君は誰よりも自由に、その空間で遊んでいた。
まるで生活そのもののように、君には自然な事だったんだ。
君にとっては電脳の世界のほうがリアルだったのかもしれない。
今は世界をすべて手に入れて
宇宙の果てまでもたどり着いているのかな。
以下、オフ会の続きです。
病室の扉を開けると、淡い西日がさしこむ広い部屋だった。
閑散としたその中に友はぽつんと寝ていた。
6人部屋なのだが、病院がもうすぐ引っ越すということで
すぐに動かせない友と、もう一人だけが残っているのだという。
友の顔はメールを送ってくれていたので知っていたのだが
近くで見たときは正直少しショックだった。
ずいぶんやせている。そう思いつつも、気を取り直して明るく話しかけた。
「○○ちゃん、はじめまして~♪来ました~!」
「senちゃん、こんにちは。」
声を聞いて2度目のショックを受ける。
ほんのかすかにしか聞こえないほどの、小さな声だったから。
看護婦さんが友の体の角度を、私がいる方へ向け始めた。
「このくらいでいいかな?」友はこくんとうなずいた。
自分で身体を動かすことができないのだ。
メールで、北海道へ旅行に行った時の写真を見せてもらったことがあったのだが
友は車椅子に座ってとても元気そうに笑っていた。
それからずいぶん時がたっているとはいえ、
ネット上やメールではいつでも明るい友だったので
現実とのギャップになかなか心が追いつかない。
近くに座って、前日行った神戸のおみやげを渡した。
細い細い手が差し出される。
それから、小さな声でせいいっぱい話をしてくれた。
時々聞きとれなくて、あまり聞き返すのも気が引けて
聞こえている振りをしてしまったこともあった。
神戸の神社の四葉のお守りを渡すと、「藤原紀香が結婚した神社だね。」
とうれしそうに言ってくれた。あいかわらず情報通の友だった。
「おお、さっすが○○ちゃん!おそろだよ!」と
私の携帯にも付けている同じストラップを見せる。
友は終始ニコニコと笑っていた。
彼女が好きだった漫画の最新刊が置いてあったので
それについても話したと思うのだが、もうあまり覚えていない。
それから、ネットの共通の友人のことや、
その一人とのオフ会のことなどもいっぱい話した。
ただ、最後ににぎった彼女の手にほとんど力が入っていなかった事と
思っていたよりずっと病状が悪く感じられた事が
心のどこかに重くのしかかっていた。
「次はブログで会おうね。オフ会日記書くから」私が言うと、
「待ってるよ。楽しみにしてるね」と友は言ってくれた。
病室を出ると、なんだかとても疲れていた。
彼女は大丈夫なのだろうか。そんな疑問がフッと湧いてきたのだが、
これまでも何度も退院して、元気にHPに復活していたので
きっとまたそのうちブログに遊びに来たり、日記を書いたりしてくれると
かすかな予感を無理やり心の片隅に押しやった。
それからしばらくたった秋の日に
共通の友人から友の訃報を知らせるメールが届いた。
あれから1年と少し。
彼女が好きだった漫画や、音楽に接するごとに
いつも彼女の顔が浮かんでくる。
彼女が好きそうな物があるたびに、いろいろ話したくなる。
そして心の中で呼びかけてみる。
ねえ、今日はこんなことがあったんだよ、と。
四葉のストラップは、今も私の携帯で揺れている。
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コメント
やっぱり涙が溢れてしまいます。
そんなに悪い状態だったのに明るいメールくれて
たんだなって思うと、胸がしめつけられる感じ。
私にはできないな・・
やっぱり彼女は強い人だね^^
senちゃんに会えて嬉しかったと思うよ~♪
私も会いに行きたかったなぁ(*^_^*)
投稿: 三つ葉 | 2010.12.07 08:57
三つ葉ちゃん おはよう♪
当時の彼女の本当の状態を書くのは
最後まで迷ってたんだけど
やっぱりありのままに書くことにしました。
本当に、苦しみを外に出さない
強い強い魔女さんだったよね。
三つ葉ちゃんも強い人だよ~♪
人の痛みの分かる人はみんな強いんだと思う。
きっと彼女は三つ葉ちゃんのそばにも
しょっちゅう来てると思うよ~♪
いつかいっしょに
彼女のおうちに行けるといいね。
投稿: sen | 2010.12.09 08:29